映画を観てきました。
ドキュメンタリー映画『どうすればよかったか?』
場所は、東京・ポレポレ東中野
これは、姉が統合失調症になった家族の記録映画です。
撮影・監督は、同じ家族の弟です。
この映画は、監督が自分と同年だということもあって、
自分と同時代を生きている家族の記録として、
非常に引き込まれました。
その理由は、この後で述べます。
上映は、昨年の12月に始まった映画で、
公開当時話題になっていたようですが、
遅れて、この映画を観ようと思ったきっかけは、
半年ほど前のYouTubeを偶然に最近見たら話題になっていたので、
興味を引かれたからでした。
ちょうど、8月1日までが上映期間でした。
上映期間最後の週、偶然に代休をとっていた日の午後4時半が上映開始。
明日が代休のその日だったので、奇遇を感じてすぐにチケット購入。
翌日、映画館に足を運びました。
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映画の中の家族は、ご両親とも医師で医学研究者。
長女のお姉さんは医学部を受験され、4回目で合格し進学。
しかしお姉さんは在学中に発症。支離滅裂な内容を大声で怒鳴り始めたり、
無為自閉になり、人との普通の関わりができなくなっていく。
お姉さんは発症直後に救急車で搬送され1回だけ受診したのですが、
正式に医療につながったのは、25年後。
この映画の監督である弟は、姉の状態は統合失調症だと考えたが、
ご両親は娘の統合失調症発症を25年の間認めず、通院を拒絶。
娘を自宅に監禁状態。玄関に南京錠で鍵をしめて生活する。
その生活の様子とやりとりが、カメラにおさめられている。
しかし、この映画は、統合失調症の発症の原因や症状について
伝えるためのものではないと、冒頭のテロップで流れる。
どうすればよかったか?
それがこの映画のタイトルです。
この映画のレビューを語るYouTubeやサイトはたくさんあります。
ご興味ある方は、ぜひ見てください。
町山智浩 映画『どうすればよかったか?』2024.12.03
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【東風のポッドキャスト】#01『どうすればよかったか?』ゲスト:藤野知明監督&淺野由美子プロデューサー part1
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ここから、私自身の個人的な体験。
高校の時、ふと書店でみかけた『ユキの日記』(笠原嘉編、みすず書房、1978)という本を
なぜか買って読んでちょっとした衝撃を受けたのを思い出します。
その本は、「分裂病」(当時)を発症した女性の日記の記録です。
日記は、発症以前の8歳からはじまり、発症後の20歳まで。
そして本人は、28歳で心不全で亡くなります。
それから、社会人経験後に哲学を勉強するためまた学生をしていたころ、
あるメーリングリストに参加した。
正式名称は忘れたが、統合失調症友の会といっただろうか。
当事者、家族、医療従事者…たくさんの人が毎日投稿していた。
私はそれをもっぱら読んでいるだけだったが。
そこから、具体的に精神科で仕事をすることを考え始めた。
一念発起し、作業療法の専門学校に通うことにした。
そしていま、精神科リハビリテーションとトラウマケアを専門とするセラピストとして働いている。
映画『どうすればよかったのか?』を観て、私の人生が、
ものすごく大きく1周回って、出発点に戻ってきたという感じもする。
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映画『どうすればよかったか?』の監督は、映画のパンフレットにこう書いています。
「両親を説得し姉を受診させるまでに25年もかかってしまったのはあまりに長すぎました」
「このタイトルは私への問い、両親への問い、そして観客に考えてほしい問いです」
その続きにはこう書いています。
「我が家は統合失調症の対応の仕方としては失敗例でした」
「現在は統合失調症を発症しても通院しながら仕事に就いている方々の話も聞きます」
「医学の助けを借りることはもちろん、家族会や専門家、書籍、ネット、色々な助けがあります」
実は、弟である監督も、社会福祉協議会や、家族会のメーリングリストで相談してきたそうです。
それでも、両親を説得するのにものすごく長い時間がかかってしまっている。
この映画は、姉が発症した理由を究明することを目的にしていないというが、
それでも観た方はいろいろと考えさせられるものがある。
たとえば、以下のような疑問が次々に浮かんでくる。
親の呪縛は強大ということか。両親が医者で研究者であるとそれだけ余計に。
子どもが素直過ぎると親の呪縛から抜けられなくなるということか。
親に作られた理想の対象であることから抜け出られなくなるほどに、
親の呪縛と囲い込みが強すぎて、家を出るなどの抵抗ができないことが、
素直過ぎるとみえるのか。
弟は家を出たが、両親の理想を一身に背負わされてしまった姉は、
家を出ることができなくなってしまったということか。
姉の唯一の抵抗方法が、発症という形をとったということか。
むしろ「治療」が必要なのは、親の方だったと考えることもできるだろうか。
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ともかく、さまざまな問いを投げかけられる映画だと思います。
東京エリアでは上映は終わってしまいましたが、大阪ではまだ上映中、
全国各地でも上映会があると思います。
ご興味を抱いた方はぜひご自身でご覧になることをおすすめします。