戦争トラウマは、日本にとっても現在進行形のもの

トラウマ


 2023年12月8日、国連安全保障理事会は、パレスチナ自治区ガザでの人道目的の即時停戦を求める決議案を採決しました。しかし、常任理事国である米国が拒否権を行使して否決となりました。
 ガザ地区では、イスラエル軍の空爆と地上戦により、すでに2万人以上の死者、そのうち子どもが8,000人以上。民間人に多大な犠牲者が出ています。
 イスラエルにも、ガザのハマスからのロケット弾で民間人に犠牲者が出ています。イスラエル国内にも、多数の市民がネタニヤフ政権を批判し、退陣を求める声があがっています。ネタニヤフを批判するユダヤ教徒も多数が声を上げ集会を開いています。
 地中海を望むガザ地区は、横浜から東京に伸びる長方形の土地に200万人が住み、安全な場所はすでにありません。ガザから離れた内陸部の西岸地区の弾圧も続けられています。パレスチナにとって、民族の危機です。さまざまなメディア、
 SNSを通じて、世界に現地の凄惨な映像・情報が入ってきます。パレスチナとイスラエルの人々は、最悪の戦争トラウマに苦しめられています。

 ここで、日本には戦争がないからよかった、と言えるのでしょうか。

 ひとつは、メディアを通じて、こうした世界の状況は、直接的間接的に一人一人の心身に影響を与えているはずだと思います。

 もうひとつは、日本の戦時中の戦争トラウマの問題はいままで軽んじられてきました。しかし、近年、日本の戦争トラウマの問題も取り上げられるようになってきました。

 最近の新聞記事で、武田鉄矢が、復員兵だった父親のことを語っています。それを読むと、彼の父親は、戦争トラウマに苦しめられていたことがわかります。「首を斬る快感」を語るおやじが許せなくて 武田鉄矢さんと父の物語

 私は、高齢者と関わることが多くありますが、戦争の話はしばしば聞きます。東京大空襲の焼夷弾が落ちてくる音がいまだに耳について離れない、爆撃で吹き飛ばされた同僚のこと、小学生のとき校庭でなぎなたの練習をさせられた体験、などなど。こうした体験は、一人の世代ではなく、世代間を通して伝えられていくものであることが指摘されています。戦争トラウマは、日本にいても決して他人ごとではないのです。