痛みの正体を知る:身体・感情・トラウマが織りなす複雑なメカニズム

トラウマ

痛みとは、まず最初に、
私たちにケガや病気が起きたことを知らせる
警告信号です。
また、痛みは、ストレスや脅威に対する反応として
引き起こされる緊張や不快感からも生じることがあります。

私たちの肉体や感情、精神、そして霊的な側面が脅かされた際、
神経系が自動的に反応し、損傷や危険から自分自身を守ろうとします。

痛みは、私たちの生存本能を支える不可欠な仕組みであり、
問題が発生していることを知らせ、注意を促す役割を果たします。

痛みとは、非常に重要な機能なのです。

痛みを感じない状態は、生命体にとって生存を脅かす危険が
わからなくなることを意味します。

痛みの信号は、損傷した身体部位の神経から脳に送られ、
脳がその情報を解釈して初めて痛みを感じるのです。

後述するように、脳のさまざまな領域が協力して、
生存反応としての痛みを引き起こします。

この過程には、記憶や感情、気分、将来に関する
意思決定を司る部分が関わっています。

痛みの意味や重要性も、痛みの体験の一部です。
たとえば、手を怪我した場合、
プロのピアニストとアマチュアのバレーボール選手では、
その意味が異なり、痛みの感じ方も大きく違ってくるかもしれません。

このように、痛みの経験は個々の状況や背景によって異なるため、
それぞれの人に合った対応が重要です。

痛みは、主に3つのタイプに分類されます。
身体的な痛み、感情的な痛み、そして心的外傷後つまりトラウマからの痛みです。

身体的な痛みは、実際のケガや組織の損傷から生じるものです。
感情的な痛みは、強い感情が解消されずに蓄積し、身体的な症状として現れることがあります。
心的外傷後の痛みは、圧倒的で恐怖に満ちた出来事に対する強い反応から生じます。

これらの痛みは、基本的な原因によって分類されますが、
その現れ方にも違いがあります。

たとえば、事故やケガの後、最も意識されるのは局所的な身体的痛みです。
一方、愛する人を失ったときには、悲しみや恐れ、怒り、絶望といった
感情的な痛みが中心となります。
そして、暴力や災害に遭遇した後には、心的外傷後の反応が現れ、
不眠やパニック発作、フラッシュバックなどの
身体的症状が見られることがあります。

この3つの痛みの分類は明確に異なりますが、
実際には、
これらのタイプが相互に関連していることを理解することが
重要です。

つまり、痛みは多面的な現象なのです。

たとえば、身体的な痛みには感情的な要素や
過去のトラウマが関与することがあり、
感情的な痛みにも身体的な症状や
過去のトラウマとの関連が見られます。
さらに、心的外傷後の状態では、
これら3つのタイプの痛みが複雑に絡み合っています。

(出典:Peter Lavine(2012).Freedom from Pain.)