慢性的な痛みに対する新たな解決法を示す最新刊
いよいよ2025年11月30日発売予定!
『痛みからの解放 トラウマによる慢性痛を癒す 内なる力との出会い』春秋社
ピーター・A・ラヴィーン+マギー・フィリップス
花丘ちぐさ監訳+志村秀実訳
本書では、慢性の痛みを緩和し解決へと向かわせるための、さまざまな実践的エクササイズが、わかりやすく説明されています。
本書のエクササイズの方法と考え方は、慢性の痛みを緩和するためにこれまで日本で主に紹介されてきたものとは、大きく異なっています。
しかし、本書の方法がはじめての人でも、読むだけでたくさんのヒントを得られるように構成されています。
その秘密は、自分自身の身体感覚と穏やかにつながるスキルを、自分の体験から学んでいくことです。
トラウマと痛みの関係
著者ピーター・A・ラヴィーンは、著名なアメリカのトラウマセラピストです。ピーター・A・ラヴィーンによれば、従来の治療を続けても治らない慢性の痛みの原因は、過去のトラウマにあると考えられます。本書では、自身が開発した身体志向トラウマセラピーの理論と方法にしたがって、慢性痛治療の臨床家マギー・フィリップスと協同で、新たなアプローチを提案しています。
その要となる考え方はこうです。トラウマによる慢性の痛みは、トラウマに対する防衛反応が解除されずに身体に残ってしまった影響が原因となっています。そこに着目したのが本書の一番の特徴です。
その理由はこういうことです。トラウマとなるような恐怖や恐れは、直接的な脅威や危険が去った後でも、心と身体と脳にたえざる緊張を引き起こしてしまいます。つまり、心と身体と脳から緊張が抜けなくなってしまいます。
恐怖反応を引き起こす脳の部分は、偏桃体と呼ばれる部分です。
偏桃体は、脳の警報アラームとも言われます。
偏桃体によって、大きな危険と判断されると、実際の危険が去っても、警報アラームがなり続けるか、あるいは、ちょっとの刺激ですぐにアラームが鳴り始めるようになってしまいます。二度と危険な目に合わないようにするための、予報アラームとして機能し始めてしまうといってもよいでしょう。
すると、身体からの防衛反応が現れます。防衛反応には、状況に応じて、戦うか、逃げるか、凍りつくか、いろいろなタイプがあります。常に緊張が絶えることがありません。
そうした緊張が、身体の痛みとなって現れてきます。
では、どうしたらいいのでしょうか。
脳神経と身体感覚へのアプローチを通じて、慢性的な痛みを改善
最初にお伝えしたように、トラウマは脳と身体に蓄積されます。蓄積されたトラウマから解放されるためには、脳と身体にアプローチする必要があります。そして、脳と身体にアプローチするためには、いろいろなエクササイズを使っていきます。
エクササイズに取り組むときに重要なのは、身体の感覚を感じながら、穏やかな呼吸を感じながら、ゆっくり行うことです。
身体の感覚が、脳と神経の「接点」「通路」になります。
穏やかな呼吸を感じながら、ゆっくり行うのは、トラウマへの防衛反応を過剰に誘発して圧倒されないように、穏やかな神経の状態で、取り組むためです。
いちばんよく用いられる方法に、グラウンディングがあります。グラウンディングとは、足から身体全体が地面に触れて安定しているのを感じるエクササイズです。
「グラウンディングのエクササイズは、肉体的、スピリチュアル的、精神的、感情的なエネルギーとつながり、それらを調和させ、自分の身体に安全に住まうようにするための方法です」(『痛みからの解放』p.49)
では、『痛みからの解放』のエクササイズ5の「グラウンディング」をみてみましょう。
基本エクササイズ
エクササイズ5:グラウンディング(同書p.49)
まず、片方の足の裏から反対の足の裏へ、やさしく体重を移動させることから始めましょう。カエルの足の吸盤のようなイメージで、しっかりと、しかししなやかに、足と地面をつなぐことをイメージしてください。
つぎに、息を吸いながら、片足または両足で、床を軽く踏みつけます。そして、息を吐きながら、身体の緊張を解き放ちます。安定した状態で身体を支えながら、どれだけ緊張を解けるか試してみてください。今度は逆を試してみましょう。息を吸いながら、身体に入ってくる息の流れを感じます。それから、息を吐きながら、片足または両足で床をやさしく踏みつけるようにします。
押さえる感覚と放す感覚を交互に繰り返すことで、自分の身体とのつながりを感じると、どんな感じがしますか? つながっているという肯定的な感覚を感じるまで、足元や下肢の圧力を弱めたり強めたりして試してみてください。グラウンディングはあなたの幸福感にどのような影響を与えますか?
いかがですか? これなら、どこでも思いついたときに、やってみることができるのではないでしょうか。
次に、重要な呼吸についてみてみましょう。
呼吸はとても大切なものですが、あらかじめお伝えしておくと、人によっては、呼吸に集中しすぎると問題が起こることがあります(同書p.53)。無理をしないように、まずは自然な呼吸を感じるようにするとよいでしょう。
次のエクササイズも、その点に配慮したものです。
エクササイズ6:ちょっと一息(同書p.51)
意識して呼吸を変えようとせず、ただただ、波が打ち寄せては引いていくように、吸う息が体内を通り、そして、息が吐き出される感覚を追いかけてください。「吸う・吐く」の一つのサイクルの間に、あなたの身体にはどのような変化がありますか? また、痛みにはどのような変化がありますか?
もしこれが役立つようであれば、次の息が体内に入ってくるとき、そして出ていくときの、身体の中の経路をたどってみてください。ちょうど、海の潮の干満のように感じ取ってみてください。今度は、あなたの身体にはどのような変化がありますか? さらに、痛みにはどのような変化があるのに気がつきますか?
気軽に何度でもこのエクササイズに戻ってきてください。不安やストレスや不快感があるときに、使ってみてください。
ここでご紹介したエクササイズは、『痛みからの解放』のごくごく一部です。
また、ご紹介していきます。
